「デオライザー」は、水膜によって排ガスの臭気や粉塵を処理する、水膜式のスクラバー(排ガス処理装置)です。
スクラバーは循環水の処理が必須ですが、どのような処理が行われるのか気になる方もいらっしゃるでしょう。そこで今回は、デオライザーの4つの特徴と、循環水処理の5つの方式、実際の納入事例を2例ご説明します。
この記事でデオライザーについて詳しく知ることで、自社の工場などにデオライザーを導入するメリットがあるかどうかがわかるでしょう。
水膜式スクラバーとは
水膜式スクラバーとは、水膜で臭気成分や埃を100%気液接触させてキャッチする方式のスクラバーを指します。
従来のスクラバーは、充填材にシャワーを浴びせ、臭気物質を捕捉していましたが、それでは抜け出てしまう可能性が高かったので、水膜を形成する脱臭装置を開発いたしました。
水膜式スクラバー「デオライザー」の特徴
デオライザーは、水膜により排ガスに含まれる臭気や粉塵を処理する、水膜式と呼ばれるスクラバーです。その特徴についてご説明します。
水膜で臭いと埃を取り除く
デオライザーは、40㎜前後の水膜による100%気液接触を可能にしています。そのため、排ガスに含まれる臭気や粉塵をしっかりとシャットアウトして、確実に取り除きます。
汚泥(スラッジ)の発生を抑える
従来のスクラバーでは、水が腐敗して汚泥(スラッジ)が発生することがありました。汚泥が発生すると、強い臭気が発生したり虫が湧いたりするため、工場内の環境を悪化させる原因となってしまいます。
デオライザーは、散気管アクアブラスターを採用して水質を浄化するシステムなので、汚泥の発生を抑制してくれます。
圧力損失が低い
充填材を通して排ガスを浄化する従来型のスクラバーは、充填材の目詰まりにより、排気の圧力が落ちやすくなっていました。
しかしデオライザーは、循環水で浄化させて目詰まりを防ぐ仕組みなので、圧力が落ちるのを防ぎます。そのため、圧力損失が低く、使い続けても排ガス処理能力が落ちにくくなっています。
ランニングコストを抑えてメンテナンスの手間を軽減する
デオライザーはカートリッジを交換するタイプで、一人でも簡単にカートリッジを交換できます。そのため、ランニングコストを抑え、メンテナンスの手間を軽減することが可能です。
水膜式スクラバー 「デオライザー」 の循環水浄化方式
デオライザーの循環水浄化方式は5種類あり、それぞれに特徴があります。ここでは、5つの循環水浄化方式についてご説明しますので、もっとも適した処理方式を選びましょう。
セットリングタンク浄化方式
セットリングタンク浄化法は、使用後の循環水をタンクに移し、少量ずつ浄化処理を行う方式です。たとえば1日分の循環水を毎日浄化処理するようにすれば、処理に負荷がかかりません。
また、希釈放流することも可能です。排水処理設備に負荷をかけたくない場合に有効です。
水処理装置併設方式
水処理装置併設方式は、スクラバーにユニットタンクを併設し、定期的に浄化処理し放流します。循環水の汚れによっては、油水分離装置、凝集装置などの併用が必要になる場合もあります。排水処理設備や、下水道設備がない場合に有効です。
下水放流方式
下水放流方式は、下水に放流可能な基準値内で循環水を放流する方式です。装置の設置時に数回のデータ計測の必要がありますが、その後は計測の手間がかかりません。
産業廃棄方式
産業廃棄方式は、スクラバーの循環水を連続使用し、汚れて使えなくなったら廃棄処理する方式です。排水処理設備や、下水処理設備がない場合に有効です。
たとえば、循環水5トンを5か月間使用する場合、1トンあたりの処理費は35,000円、1日あたり1,170円となり、コストを抑えられます。
定量注水方式
定量注水方式は、循環水が一定量になるように補給しながらオーバーフローさせ、放流基準値内の水を排出する方式です。地下水を使えるなど、水を安く使用できる場合に有効です。
水膜式スクラバー 「デオライザー」 の納入事例
ここでは、具体的なデオライザーを導入することで、どのような悩みや課題が、どのように改善されたかをご紹介します。
1.塗装工場の排ガス処理
- <悩み・課題>
- 塗装乾燥炉から出る排ガスを燃焼方式で処理しているが、処理が足らない。工場内に発生したガスで作業環境は悪化し、外部に漏れたガスにより、近隣住民からの苦情が寄せられている。
- <解決策>
- 水膜式のデオライザーを導入したところ、工場内と外部に発生していたガスを処理できるようになった。
- <結果>
- 工場内の作業環境が改善し、近隣住民からの苦情もなくなった。
有機溶剤の排ガス処理
- <悩み・課題>
- 液晶カラーフィルターを水溶性の有機溶剤で洗浄する際に、溶剤臭が発生する。この溶剤臭が外部に漏れ、近隣住民への影響がある。
- <解決策>
- 水膜式のデオライザーを導入したところ、溶剤臭を処理できるようになった。水膜は1段で十分処理可能だった。
- <結果>
- 外部への溶剤臭の排出を抑えることに成功した。
まとめ
「デオライザー」は、水膜で排ガスの臭気や粉塵などをキャッチして処理する、水膜式を採用しています。
デオライザーには、水膜式排ガス処理能力が高い、汚泥(スラッジ)の発生を抑制できる、圧力損失が低い、ランニングコストが低いなどの特徴があります。また、5つの循環水処理方式があり、工場の環境やコストに合った方式を選べます。
従来の排ガス処理設備では処理能力が足らない、排ガス処理に問題を抱えているなどの場合は、デオライザーの導入をぜひ検討してみてください。