製造業の浄化槽や水族館の水槽などでは欠かせない存在が散気管(または散気装置)です。しかし、散気管の作動が続くとパイプに目詰まりが発生します。年数が経過するにつれて目詰まりの頻度が増えるので、そのたびに現場での作業がストップすることになります。
散気管の目詰まりはなぜ起きるのか
「散気管での目詰まりは避けられない事象である」ともいわれています。
そこで、散気管に起きる目詰まりの原因について解説します。
散気管で目詰まりが起きる原因を解説
散気管で目詰まりが起きる部位は、酸素の出口である散気ノズルの先端部分です。空気の気泡を浄化槽内の水に溶け込ませるために、汚水散気ノズルの出口には必ず微細な穴(またはスリット)が空いた器具が取り付けられています。これを業界では「メンブレン式」などと呼ばれています。
単純な構造では気泡が大きすぎて汚水に溶け込みにくいことから、できるだけ細かい泡を発生させるために微細な穴やスリットが空いているというわけです。ディフューザーは散気管が正常な機能を果たす重要な部位なのです。
散気管のディフューザー部分には、ゴム製のものが多く使用されています。したがって、使用頻度が重なるにつれて、ゴムの穴部分に汚泥が付着して「目詰まり現象」が発生するというわけです。浄化槽に送り込む気泡は数ミリ程度が理想とされており、この微細な空気の泡を作り出すには、ディフューザーの穴は数百ミクロンでなければならないとされています。
散気管の目詰まり現象は、浄化槽の汚泥がディフューザーに付着することだけでなく、汚泥が水圧によってディフューザーを逆流し散気管のパイプ内部に流入してしまうことがあります。これによっても目詰まりが起きてしまう原因となるのです。
現在は、ディフューザー部位に高品質のシリコン製のものが使用されるようになってきました。しかしながら、ゴムにせよシリコンにせよ材質に弾力がある以上、目詰まりを完全に無くすことは難しいといわれています。
散気管の目詰まりを防ぐ対策とは
散気管の目詰まりが発生するのは致し方ない現象なのかもしれません。
それでは、目詰まりを事前に予防する対策はないのでしょうか?
以下に散気管の目詰まり予防策について、鹿児島県環境保全協会が実施した2通りの実証結果について紹介します。
散気管の使用時になすべき目詰まりの予防策について
第1の方法は「真空式パイプクリーナー」を使用する方法です。「真空式パイプクリーナー」は、一般住居のキッチンやトイレの排水管が詰まった時に使われる家庭用パイプクリーナーと基本構造が同じで、業務用器具も販売されていますが、家庭用のものでも利用可能です。
ポンプの持ち手を引き上げることで器具内部を真空状態にし、持ち手を一気に引き下げることで圧縮された空気が勢いよくポンプから噴出してパイプの詰まりを弾き飛ばすことができます。
もうひとつの方法として、目詰まりの原因となる浄化槽底部の汚泥を除去するために、ドリルポンプにインパクトドライバーを接続し、汚泥を吸い上げる方法があります。この方法は、汚泥の除去として有効であることが報告されています。
これらの方法は、いずれも費用がかさむ大掛かりなメンテナンスではないので、現場のスタッフで充分に対応できるという手軽さが大きなメリットとなっています。
散気管の目詰まりが起きたときの対処方法
散気管に限らず、およそ機械類というものは、いくら予防策を講じていても障害や故障を完全にゼロにすることは困難です。
それでは、散気管に目詰まりが発生した場合、現場ではどのように対処すべきなのでしょうか?
散水管の目詰まり対処法について、以下で解説していきます。
現場で散気管の目詰まりが起きたときにどう対処すべきか
いくら予防措置を取っても、散気管の目詰まりを100%防ぐことは難しいといわれています。しかしながら、目詰まりを放っておくと大きなトラブルにつながる恐れがあり、修理などに多額の費用がかかってしまうというリスクも否定できません。
散気管と装置全体のメンテナンスを定期的に行うことが大切ですが、メーカーによる技術革新は想像以上に進んでおり、今では「目詰まりが起きにくい構造」をキャッチフレーズにした散気管装置が登場しています。
以下でその代表的な製品を紹介します。
目詰まりが起きにくい「アクアブラスター」
株式会社アイエンスの散気管装置「アクアブラスター」は、従来の散気管にあったいくつもの課題点を解決した製品として注目されています。
散気管の目詰まりは、散気管装置が気泡を噴射する際に浄化槽に沈殿した汚泥が舞い上がって散気管の噴射口に付着したり、パイプ内への逆流現象が発生したりすることに原因があります。
アクアブラスターは、微細気泡を攪拌対流させることで、槽内底部に汚泥が堆積しにくい構造となっています。
さらに、エアリフト効果により槽内の汚泥は一か所に集まることなく均一に分散します。すなわち、目詰まりの根本原因を無くす機能を持っているのです。そして、パイプ内部では特殊ファンによって油分やSS(浮遊物質)が粉砕され、内部圧力の損失がゼロになるので、ブロワーの負荷が低減されることで、汚泥の逆流を防ぐようにもなっています。
また、アクアブラスタータイプの筒形散気装置は、酸素溶解効率がメンブレン式と比較して低いと言われておりますが、これまでメンブレン式からアクアブラスターに交換した結果、食品工場などすべての現場において溶存酸素濃度が、2倍前後上昇していることが確認されています。
散気管の目詰まりで悩む製造現場のスタッフの負担を軽減するには、目詰まりの根本原因をゼロに近づけ、なおかつ消費電力の削減も実現した最新鋭の設備の導入を検討してみてはいかがでしょうか?